MEDICAL COLUMN
医療コラム


「心臓病でも運動していい?」退院後の体力回復に向けた運動の考え方
こんにちは。札幌市中央区の循環器内科「南円山みんなの内科ハートクリニック」院長の小浪佑太です。
心筋梗塞や心不全、狭心症などの心臓病を経験されたあと、「運動はどこまでしていいのだろう」「散歩くらいなら大丈夫?」「階段を上っても問題ない?」と不安に感じている方は多いのではないでしょうか。退院後、以前のように動けなくなった自分に戸惑い、体を動かすこと自体が怖くなってしまう方も少なくありません。
しかし、心臓病のあとに安静にしすぎることは、かえって体力や心臓の機能を低下させる原因になることが分かっています。大切なのは、「動かないこと」ではなく、「安全な範囲で適切に動くこと」です。この記事では、循環器専門医の立場から、心臓病を経験された方が運動とどう向き合えばいいのかをお伝えします。
心臓病のあと、安静にしすぎるとどうなる?
「心臓に負担をかけたくない」という気持ちから、退院後にできるだけ動かないようにしている方がいらっしゃいます。しかし、過度な安静は体にとってプラスとは限りません。
心臓病のあとに長期間体を動かさずにいると、筋力や体力(運動耐容能)が低下し、日常生活でのちょっとした動作でも息切れや疲れを感じやすくなります。また、筋肉量の減少は血液の循環を悪くし、心臓への負担をかえって増やしてしまうことがあります。さらに、動脈硬化が進行しやすくなる、血糖値や血圧のコントロールが悪化するなど、心臓病の再発リスクを高める要因にもつながります。
「安静にしていれば安心」ではなく、「適切に動くことが心臓を守る」という考え方が、現在の循環器医療では重要視されています。
心臓病の方にすすめられる運動とは
心臓病を経験された方には、ウォーキングや軽いジョギング、自転車こぎ、エアロビクスなどの「有酸素運動」がすすめられています。有酸素運動とは、体に取り込んだ酸素を使ってエネルギーを作り出しながら行う運動のことで、比較的長い時間、無理なく続けられるのが特徴です。
一方、重い物を持ち上げたり、全力で走るような短時間に強い力を出す運動(無酸素運動)は、心臓に大きな負担がかかり、症状を悪化させたり危険な不整脈を引き起こしたりする可能性があるため、心臓病の方にはおすすめできません。
ただし、適切な強さで行う軽い筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)は、心臓病の方にも有用とされています。自己流で行うのではなく、必ず医療機関で指導を受けてから取り組むことが大切です。
運動の強さ・時間・頻度の目安
「どのくらいの強さで、どのくらいの時間、週に何回運動すればいいのか」。これは退院後に多くの方が疑問に思われるポイントです。日本循環器学会のガイドラインなどを参考に、一般的な目安をご紹介します。
運動の強さ
心臓病の方が運動する際の強さの目安は、「軽く汗ばむ程度」「ややきついと感じるが、おしゃべりしても息切れしない程度」です。「ゼーゼーする」「胸が苦しい」と感じるほどの運動は強すぎます。運動中の心拍数や自覚症状を指標にして、無理のない範囲で行いましょう。
運動の時間
1回あたり30〜60分程度が理想的とされていますが、最初から長時間行う必要はありません。朝と夕方に20分ずつ分けて合計40分でも効果が期待できます。日常生活の中でエレベーターの代わりに階段を使うなど、こまめに体を動かすことも大切です。1日の総歩数として7,000〜8,000歩を目標にするとよいでしょう。
運動の頻度
週に3〜5日の頻度で運動することがすすめられています。心臓病が比較的軽症で、高血圧や糖尿病などのリスク因子がある方は、できれば毎日行うのが理想的です。ただし、運動をした翌日に疲れが残っていたり、体調がすぐれないときは無理をせず休みましょう。
運動するときに気をつけたいこと
心臓病を経験された方が安全に運動を続けるためには、いくつか注意すべきポイントがあります。
運動を避けるべきタイミング
- 起床直後や空腹時、食直後は体調を崩しやすいため、食後1〜2時間経ってから行う
- 体調が悪い日、睡眠不足の日は無理をしない
- 運動をした翌日に疲れが残っている場合は、その日は休む
季節ごとの注意点
- 夏場は脱水に注意し、こまめな水分補給を心がける
- 冬場は手袋やマスクなどの防寒対策を行い、暖かい時間帯に運動する
札幌の冬は特に寒さが厳しく、急な寒暖差は心臓に大きな負担をかけます。屋外での運動が難しい時期は、室内でできる運動に切り替えるなどの工夫も大切です。
すぐに運動を中止すべきサイン
運動中に以下のような症状が出た場合は、すぐに運動を中止し、医師に相談してください。
- 胸の痛みや圧迫感
- 強い息切れ、呼吸困難
- めまい、ふらつき、気が遠くなる感じ
- 動悸が激しくなる、脈が乱れる
- 冷汗が出る
運動を控えるべき場合もあります
心臓病の方に運動は有益ですが、すべての方がすぐに運動を始められるわけではありません。以下のような場合は、まず主治医に相談し、運動の可否を確認する必要があります。
- 病状が不安定な心不全で、強いむくみや息切れがある
- 急性心筋梗塞や急性心筋炎の発症直後
- 重度の大動脈弁狭窄症がある
- 高血圧や不整脈のコントロールが不十分
- 医師から運動を控えるよう指示されている
こうした状態でも、治療によって病状が安定すれば運動を開始できるケースは多くあります。「自分は運動できないのではないか」と決めつけず、循環器専門医に相談してみてください。
自己流の運動と医療機関での運動の違い
退院後に自分でウォーキングや体操を始める方もいらっしゃいますが、心臓病を経験した方にとって、自己流の運動にはリスクが伴います。自分にとって「ちょうどいい強さ」が分からないまま運動を続けると、知らず知らずのうちに心臓に過度な負担をかけてしまう可能性があるためです。
医療機関で行う運動療法では、医師が心臓の状態や検査結果をもとに、その方に合った運動の種類・強さ・時間・頻度を具体的に決めた「運動処方」を作成します。いわば運動の「処方箋」です。さらに、心臓リハビリでは運動中に心電図でモニタリングを行いながら進めるため、自己流の運動とは安全性が大きく異なります。
「運動したほうがいいのは分かっているけど、どこまでやっていいか分からない」。そう感じている方にこそ、医療機関での運動指導を受けていただきたいと考えています。
心臓リハビリテーションという選択肢
心臓病を経験された方が、安全に体力を取り戻し、再発を予防するための包括的なプログラムが「心臓リハビリテーション(心リハ)」です。
心臓リハビリでは、運動療法だけでなく、食事指導、生活習慣の見直し、心理的サポートを組み合わせて行います。医師・看護師・理学療法士・管理栄養士がチームで対応し、患者様一人ひとりの心臓の状態や体力に合わせたプログラムを提供します。運動中は心電図でモニタリングを行うため、一般のジムやご自宅での運動とは安全性の面で大きな違いがあります。
心臓リハビリの対象となる方
- 心筋梗塞や狭心症の治療後の方
- 心不全と診断されている方
- 開心術(心臓の手術)を受けた方
- 末梢動脈疾患のある方
- 大血管疾患の治療後の方
「自分が心臓リハビリの対象になるのか分からない」という方も多いと思います。上記に当てはまる方はもちろん、退院後に体力の低下を感じている方や、運動をどこまでしていいか不安な方は、一度ご相談ください。
▶ 心臓リハビリテーションの詳細はこちら
当院での取り組み
南円山みんなの内科ハートクリニックでは、院内に専用の心臓リハビリテーション室を設けており、心筋梗塞・心不全・狭心症などの治療後の方を対象に、心臓リハビリを実施しています。
循環器専門医が心臓の状態や検査結果をもとに運動処方を作成し、専門病院で経験を積んだ理学療法士が運動指導を担当します。運動の前には医師が診察を行い、運動中は心電図モニタリングのもとで安全に配慮しながら進めます。管理栄養士による食事指導も併せて行い、運動だけでなく生活全体を見据えたサポートを提供しています。
「退院したけど、体力が戻らない」「運動していいのか分からず、つい動かなくなってしまった」「再発が心配で不安」。こうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
当院へのアクセス
南円山みんなの内科ハートクリニックは、札幌市中央区に位置し、公共交通機関でもお車でも通いやすいアクセス環境です。
公共交通機関をご利用の方
北海道中央バス「旭山公園通18丁目」バス停すぐ
札幌市電「西線9条旭山公園通」駅より徒歩約5分
札幌市営地下鉄 東西線「西18丁目」駅より徒歩約14分
札幌市営地下鉄 東西線「円山公園」駅より徒歩約20分
お車でお越しの方
クリニック専用駐車場(18台分)をご用意しています。札幌市中央区だけでなく、豊平区・西区・南区など札幌市全域から多くの患者さまにご来院いただいています。
心臓病のあとの運動に不安を感じている方へ
心臓病を経験されたあと、「運動はどこまでしていいのか」という不安を抱えるのは自然なことです。しかし、適切な運動は心臓を守り、体力を回復させ、再発のリスクを下げる大切な治療のひとつです。
自己判断で無理をするのも、不安から動かずにいるのも、どちらも体にとって望ましくありません。大切なのは、循環器専門医のもとで自分に合った運動の内容と量を知り、安心して取り組むことです。
札幌市中央区で心臓病のあとの運動や体力回復についてお悩みの方は、南円山みんなの内科ハートクリニックへご相談ください。検査から運動処方、心臓リハビリテーションまで、一貫してサポートいたします。
南円山みんなの内科ハートクリニック 院長 小浪 佑太
資格
認定内科医
総合内科専門医
循環器専門医
日本心血管インターベンション治療学会認定医
ACLS-EP; Advanced Cardiovascular Life Support for Experienced Provider
所属学会
日本内科学会
日本循環器学会
日本心血管インターベンション治療学会
日本心臓リハビリテーション学会